RAINBOW
降りしきるアメの中を、こどもが歩いている。
探し物は、見つからない。
はじめに降ってきたのは「赤」。
鮮やかなその色を手に取り、こどもはアメを口に含む。
口の中に広がるその甘さに、こどもは首を振る。
これじゃない。
おとうさんはどうしたの?
おかあさんはどうしたの?
次に降ってきたのは「緑」。
舞い降りるしずくを、こどもは顔を上げて受け止める。
喉を伝うその甘さに、こどもは首を振る。
これじゃない。
どこからきたの?
どこまでいくの?
「赤」と「緑」のアメの中を、こどもは歩いている。
肌と髪をアメの色に染めながら、こどもは次の色を待つ。
二色のアメの間をすり抜けるように、今度は「青」が降ってくる。
アメはこどもの頬を伝いくちびるへ流れる。こどもは舌を這わせ「青」を舐める。
くちびるを染めるその甘さに、こどもは首を振る。
これじゃない。
次から次へと振ってゆく様々な色のアメを、こどもはひとつずつ口に入れてはその甘さに首を振る。
アメの色はどんどん増えていくが、こどもの探し物は一向に見つからない。
最後にこどもが「紫」を舐めて首を振った瞬間、色の洪水となったアメはぴたりと止み、
こどもは「白」の前に立っていた。
こどもはアメの色に染まっているが、「白」は何にも染まっていない。
「探し物は見つかった?」
「白」がこどもに微笑みかける。だが、こどもは答えない。
色のアメに打たれたこどもは「白」を認識することができない。
ただただその場に立ち尽くすこどもに、「白」はやさしく囁く。自分の身体を見て御覧?
こどもは初めて自分の身体を見た。
探し物が、見つかった。
こどもはゆっくりと、腕に舌を這わせる。
こどもの肌は、とても苦い味がした。
こどもは、その甘さに初めて涙を流す。
「白」はおだやかな瞳で「黒」を見つめていた。