白昼夢
はじめにおぼえたこと。
ねること。
たべること
かみつくこと
それとせまいところをくぐりぬけること
ねえさんにおそわったこと
たくさんたくさん。
にいさんにおそわったこと
にんげん。おだやかなやさしさ。
最初のわたしは、ねて、たべて、かみついて、あと、くぐりぬけるだけ。
くぐる穴はいつも、したもうえもぬるぬるしてて、すべりやすかったから。
穴のしたはつるつるのいしのゆか。穴のうえはごつごつのいわ。
わたしはしゃがんで、穴にわたしのあたまをつっこむ。
かたがぬけるとき、とってもくるしい。
おなかがぬけるとき、とってもくるしい。
でも、とってもきもちいい。
にいさんにあったのも穴をくぐりぬけたとき。
穴からわたしのあしをするりとだして、
たちあがったらにいさんがいたの。
わたしはもちろんかみついた。
でもにいさんはやんわりとめた。
「おいで」っていってたきがした。
わたしはねえさんにあった。
にいさんがいってた。
「このこにいろいろおしえてくれ」
わたしにねえさんのおもいでがくる。
まっくらのなか。
かみもめもくろいおんなのこが
おとうさまってわらいながらさけんでいた。
なんどもなんども。
わたし、にいさんはほんとのにいさんだけど、ねえさんはほんとのねえさんじゃないってわかってた。
わたしにわたしのおもいでがくる。
しろいかみの、あかいめのおんなのこが、
じっとみていた。
まっくら。
あの時、わたしはねえさんと石の道を歩いていた。
そしたら、牛が坂道の方へひきずられていた。
・・ひとりで。
ねえさんは言った。
「牛がひとりでひきずられるわけないじゃない。きっといぬかねこがいるのよ」
わけがわからなかったけど、とっても納得できた。
石の階段を降りかかったとき、まえにくろい猫が歩いていた。
石でできたてすりのうえに乗っていた。
ねえさんは言った。やさしく。
「ほぅら。あそこの牛、おまえのかあさんがひっぱってるんだよぅ」
わたしはぞぅっとなった。猫もそうらしかった。
わたしのあしとねこは走り出した。
坂道のしたで牛とぶつかりそうになったけど、なんとかぶじらしかった。
牛をひっぱる母猫がちらりと見えた。
わたしと猫はまたねえさんのいる石の階段にいた。
猫は言った。
「わたしはいくよ」
それがわたしとねえさんのさいご。
わたしは穴をくぐりぬけている。おなかがとおりぬけるのでくるしい。けどとってもきもちいい。
わたしのあしをするりとだして、たちあがったらおおきなおおきないわがあった。
たくさんもじがかいてあった。よもうとしたらそこのあたりのもじがひかった。
わたしには、わかった。 ぜんぶおんなじおうちのひとだって。
いわのうらにはとってもとってもいいおじいさんのかおがちいさくちいさくかいてあった。
そのうえにはもじがあって。
「 」
わたしはそのもじをみて、ぞっとなって、うしろをむいたらさくがあって、
さくをとびこえて。
わたしは穴をくぐりぬけている。おなかがとおりぬけるのでくるしい。けどとってもきもちいい。
わたしのあしをするりとだして、たちあがったらおおきなおおきないわがあった。
たくさんもじがかいてあった。よもうとしたらそこのあたりのもじがひかった。
わたしには、わかった。 ぜんぶおんなじおうちのひとだって。
いわのうらにはとってもとってもいいおじいさんのかおがちいさくちいさくかいてあった。
そのうえにはもじがあって。
「 」
あたまのなかで、おじさんのこえがした。
「そのかおがウインクしたら、なにをいっているかわかるかい」
わたしは、わかった。
「あなたはいま、 」
わたしはすこしぞっとなって、うしろをむいたらさくがあって、
さくをとびこえて。
ふたりのひとがいた。ひとりはおじさん。ひとりはくろい。
くろいひとのおもいが、わたしにくる。
「オオカミノコ」
ねえさんが、ぞっとするくらいきれいにわらっている。
にいさんが、おだやかなめでわたしをみている。